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「実行委員会」設立趣意書と経緯/補足

今年後半に開催される、日本・モザンビーク・ブラジルによる「3カ国民衆会議」に向けて設立された実行委員会の趣意書が完成しました。ぜひ、【経緯・補足】とあわせて、ご一読下さい。



               「3カ国民衆会議」実行委員会 趣意書

        〜危機の21世紀を超えて、つながりあい、食の幸せを未来に手渡すために〜
        
                                           2018年8月3日



 21世紀に生きる私たちは、未来の世代にどのような「食」と「農」を手渡していけるでしょうか? そのためにどのような「農」を取り戻すことが出来るでしょうか?

 いま、日本だけでなく、世界各地で「食」とそれを支えてきた農家は深刻な危機に直面しています。「食」はなくてはならない命の源です。これまで私たちは、食卓にのぼる「食」の多くを「家族による小さな農業(家族農業)」に頼ってきました。しかし、いま、これまでの「農」の営みが続けられないところまで、世界中の農家は追いつめられています。

 その原因に、もうけを最重要視する投資や企業によって構築されるグローバル・フードシステム、それを推進する各国政府や国際機関の政策、地球温暖化などによる異常気象があります。国によってその影響は異なりますが、家族農家の手から、農地・水・たね(種子)・森へのアクセス、そして「どこで何をどう育てるのか」の決定権が急速に奪われつつあります。いつの間にか遺伝子組み換え作物が栽培され、みなの口に入ってしまっている現状もその一例です。農家の苦境は、「食」の受け取り手でもある私たちが、「どこで誰の育てた何をどう食べるか」の選択肢と決定権を失うことにもつながっています。つまり、「食」と「農」の支配を通じて、一人ひとりの生き方や生命までもが左右される時代となっています。

 グローバリゼーションの負の影響をもっとも深刻な形で受けた「南(途上国)」の先住民族や家族農業を営む人びとですが、何重にも及ぶ圧力を受けながらも、それを乗り越えるための創意工夫を積み重ねてきました。「母なる地球(マザーアース)」、「食の主権」、「たねへの権利」、「アグロエコロジー」、「小農の権利/主権」——これらのビジョンや実践は、国境を超えた人びと同士の連帯を通じて、世界に広がり、多くの素晴らしい変化を生み出してきました。来年には、「国連家族農業の10年」が始まります。

 これを受けて、日本の私たちは、アフリカのモザンビーク、南米のブラジルから来日する農民男女、教会関係者、女性運動、環境や人権団体、若手研究者の皆さんとともに、多様性を大事にし、「食と農の未来」を描き、課題を整理し、これらを乗り越えるための方策と計画を話し合うことになりました。

 3カ国の人びとの出会いを通じて、みなの「共通の家」であるはずのこの地球、自然、地域社会、農家、一つひとつの命を守り、つながりと主権を土台とした幸せと喜びあふれる「食」と「農」の関係を未来の世代に手渡せるよう、力をあわせたいと思います。






【3カ国民衆会議〜経緯と補足】


 日本・モザンビーク・ブラジルの市民社会による「3カ国民衆会議(Triangular Peoples Conference/三角民衆会議)」のアイディアを最初に提案したのは、モザンビーク最大の小農運動「全国農民連合(UNAC)」でした。そして、2013年8月に、第1回「3カ国民衆会議」がモザンビークの首都マプートで開催されました。300人近い参加者の大半を占めたのが、モザンビークの小農でした。



 なぜ、モザンビークの小農は日本やブラジルの市民社会とともに、会議を開催したかったのでしょうか?

 

 「三角協力」はもともと、これら3カ国の政府の発案によって始められたものでした。

 2009年9月に、日本、ブラジル、モザンビークの3カ国政府は、モザンビークの北部(ナカラ回廊地域)で大規模農業開発事業「三角協力によるアフリカ熱帯サバンナ農業開発プログラム(プロサバンナ)」の着手に合意しました。ナカラ回廊地域の農地の9割以上は、地域住民の8割を占める小農が耕しています。そのような地域で、日本政府は、1980年代に南米ブラジルのセラード地域で進めた開発援助事業(日伯セラード農業開発協力:プロデセール)に倣う事業として、「プロサバンナ事業」を進めようとしました。



 しかし、ブラジルのセラード地域は、豊かな森林に恵まれ、生物多様性の宝庫かつ南米大陸の「水がめ」でもあり、先住民族やアフリカ系の人びと、伝統的な牧畜と農を営む人びとが暮らしてきた場所でした。その地域を、日本とブラジルの「プロデセール事業」推進者らは「不毛の大地」と呼び、木々を引き抜き、大豆のモノカルチャー(単一作物栽培)を導入し、「緑の砂漠」に一変させました。さらに、大豆生産にあたっては、大量の農薬が散布され、ブラジルは世界一の農薬使用国になり、自然環境や地域の人びとの健康を蝕むようになりました。



 「ブラジルの成功をアフリカに」の掛声のもと、日本政府が推進する「プロサバンナ事業」では、政府や民間資金を活用して、モザンビークの「農業生産性の低い地元小農が余らせた広大な土地」に日本やアジア市場に向けた大豆の大規模生産を導入する計画がたてられました。そして、「ナカラ回廊開発計画」では、この大豆や穀物を日本とブラジルの政府・企業が整備する鉄道と港を使って、日本を含むアジア市場に輸出する計画が進められていました。事業対象地として、日本の耕地面積(444万ヘクタール)の2.25倍にも上る10万平方キロメートル(千万ヘクタール)、3州19郡という広大な地域が指定されています。



 2012年秋、この計画を新聞などで知った地元の小農は反対の声をあげました。その時に彼らが表明したのは、この援助事業が存在と尊厳を否定した「小農」こそが、地域の人びとの食べものを持続的に生み出し、土地や社会的基盤と文化伝統を継承し、「地球環境の守護神」として日々くらし、地域社会と国と世界に寄与してきたこと、そして、将来世代のために、地域・環境・命・暮らし・主権・未来を守る運動に全力をあげるということでした。



 それから6年、私たちは、モザンビークとブラジルの小農、そして彼女ら・彼らを支えるモザンビークとブラジルの市民社会組織との交流と連帯を通して、たくさんのことを学びあってきました。しかし、「プロサバンナ」計画の一部は変更されたものの、「回廊開発」は継続し、当初の計画どおりに大豆・穀物の大規模生産を目指す外国企業や投資が流入し、地元農民の追い出しが続いています。



 また、「プロサバンナ」では、「地域農民の3割を2020年までに近代農法に転換させ、商業農家を作る」という事業の方向性が打ち出され、「改良種子・外部投入財(化学肥料・農薬)」の導入と契約栽培の押しつけ、事業に反対する小農や住民の弾圧、援助資金を使った市民社会の分断を図る介入、農民運動の弱体化への関与が続いています。さらには、モザンビークで日本政府と米国政府が実施主体となっている援助事業「栄養と食料安全保障のためのG7アライアンス」によって、種子法の改正(遺伝子組み換え種の導入)や企業に有利な土地政策などが急速に進められており、小農らはますます苦境に立たされています。



 日本でも、農民組織の弱体化を狙った政治的介入が続く一方、去年4月には民間企業の参入を促進するために主要作物種子法が廃止され、遺伝子組み換えの品種と農薬使用基準の規制緩和の認可ラッシュが続いています。農家や消費者の手の届かないところで、「食」と「農」のあり方が決められ、家族による小さな農業の基盤が奪われる事態が起っています。

 

 モザンビーク小農の反対運動のため、「プロサバンナ事業」が予定通りに進まなかったことを受けて、2016年2月、セラード地域に残った森林地帯における大規模農業開発(マトピバ計画)が、日本とブラジル政府によって合意されました。今度はブラジルの先住民族や小農を含む幅広い地域の人びとから反対の声があがりました。



 「プロデセール事業」開始からすでに30年以上が経過し、セラード地域では、小さな規模の農家が追い出され、地域の食のシステムが破壊され、代わりに遺伝子組み換え大豆やユーカリなどの輸出向け単一作物のモノカルチャー・プランテーションに変えられてしまいました。ここでも、日本の官民が港湾などの整備に取り組んでいます。さらに、森林と土地を守ろうとする人びとが次々に暗殺される事態にまで至っています。



 地球温暖化は工業化や電力や自動車利用などによる化石燃料の大量消費だけでなく、大規模な工業型農業や森林のモノカルチャー化、農地転用によっても促進されています。ブラジルやモザンビークで計画・推進されてきた農業開発や回廊開発事業は、地球温暖化による気候変動をさらに推し進めているのです。気候変動による異常気象(干ばつ・大洪水)の影響を直接受けるのは、日本を含む世界各地の家族農業です。結果として、都市に暮らす人びとも食料価格の高騰という形で影響を受けています。また、生命操作が行われた遺伝子組み換え作物は、セット販売される農薬とともに、私たちの身体に直接あるいは食物連鎖を通じて間接的に影響を与えています。つまり、「食と農の支配」を通じて、命もまた支配の危機に直面しているのです。このように、私たちはいま、世界の隅々まで張り巡らされた「蜘蛛の網」につかまり、逃れることが難しい状況におかれています。



 しかし、この深刻な状況の中からも、未来に向けたオルタナティブが育まれてきました。モザンビークの小農は、「犠牲を強いる開発は要らない。私たちは幸せの発展を自分の手でつくり出していきたいのだ」と述べて、上から押しつけられる開発計画に抗い、「幸せの発展」を模索しています。また、ブラジルやモザンビークをはじめとする中南米やアフリカ・アジアの諸国では、小農の運動が中心となって、「母なる地球(マザーアース)」、「家族農業」、「食の主権」、「アグロエコロジー」「農民の権利/主権」の概念を、国家政策に採り入れるために尽力してきました。



 日本においても、農業生産の後退と地域の疲弊が急速に進んでいますが、家族農業を基礎としつつも、一般的な企業形態とは異なる集落営農や法人化を通じて、耕作放棄地対策や高齢者の農地の作業受託など、地域農業を守る取り組みが進められています。消費者との提携や新規就農者の受け入れ促進も長きにわたって試みられてきました。言葉として声高に主張されることはあまりありませんが、日本においても「食の主権」や「地域主権」への意識の高まりと意欲的な取り組みが存在しています。



 これら各地の「家族による小さな農業(家族農業)」の試みは、互いを刺激し合い、世界レベルでの議論にも大きな影響を与えるようになりました。その結果、来年から「国連家族農業の10年」が開始するとともに、現在「小農と農村で働く人びとの権利に関する国連宣言」が策定されつつあります。世界では、多国籍企業や投資家、国際機関や各国政府に奪われた「食」と「農」の主権を、家族農家と人びとの手の中に取り戻す動きが始まっているのです。



 11月に東京で開催する「3カ国民衆会議」では、多様性の尊重と互いの尊厳を土台としながら、次のことを目指します。(1)アフリカ、南米、アジアの3つの地域・国の農民と人びと(民衆)が出会い、(2)互いの課題や試みを紹介しあいながら、(3)3カ国の関係を政府主導の「上から」ではなく、民衆同士による横の関係に転換し直すこと。そして、(4)未来に向かって、ともに、またそれぞれが、何をどう取り組んでいくのかについて話し合います。その上で、(5)話しあった結果を社会と世界に広く発信します。そして、(6)みなで決めた取り組みを一つでも実現していくことで、(7)みなの「共通の家」であるはずのこの地球と一人ひとりの命を守り、未来の世代につながりと主権を土台とした幸せと喜びあふれる「食」と「農」の関係を手渡せるよう力をあわせたいと思います。



 多くのみなさまのご参加・ご協力をお願いいたします。
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9月7日の会合、出席します。

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